有木 志津加 氏 有木 志津加 氏

─ 相続支援を始めたきっかけ

相続がきっかけで管理を切られることが続き、この状況を何とかしたいとずっと考えていました。
 会長が元々勉強好きだったこともありますが、今後の相続の重要性を感じ、日管協の相続支援コンサルタント講習に社員数名で参加しました。最初は行かされたという思いもあり、初回の講座で、相続支援コンサルタントはこういうのを目指すという話があったのですが、よく理解できませんでした。徐々に勉強していくうちに、今まで失敗していた案件が、これを知っていればできたのではないかと思うようになり、相続の重要性を理解できるようになってきました。弊社は昨年創立30年で、オーナーさんの代替わりが年々増えています。相続前から提案していけば、弊社にもチャンスがあると思い、しっかりと相続の知識を深めようと決意しました。

 最初の相談がすごくややこしい案件だったのです。賃貸オーナーで物件が2つあり、土地もありました。相続人は長男、長女、次女の3名いらして、遺言もなく、分割はこうしたいという想いもない。長男は自分がもらえるものと思っていたようですが、「ちょっと待ってくれ」と言って出てきたのが、長女、次女の旦那さんでした。これをどういう風に分割していくか。平等にしてくれというのが最初のご相談でした。当時は相続の知識のある会長にも手伝ってもらい、提案していましたが、今後、相続絡みの案件が多くなるので、どんどん勉強していこうと具体的な相談を受けることで感化されました。


─ プロジェクトチームの立ち上げ

 知識をインプットしていますが、どうやったらこの知識を伝えられるのだろうと考えていった結果、平成26年に、まず社内にプロジェクトチームを立ち上げました。まずはオーナーさんを集めてセミナーを行いました。そこからセミナーを4回、2カ月ないし3カ月に一度のペースで行っていきました。そのセミナーをきっかけに自分の資産が分からないなどといった内容で、予想以上にオーナーさんが相談に来られるようになりました。第2回のセミナーを行った後で、アパートが1棟と自宅と土地のあるオーナーさんに、奥さんと息子さんが一人いて、自宅とアパートは奥さんに残してあげたいと相談がきました。これだと3分の2以上が奥さんに行くので、息子さんがダメだといったらダメですよねという話をし、最終的に遺言書を書いて、ここを渡すからお母さんの面倒を見てくれという対策を行いました。

 相続税がかかる、かからない、の問題ではなくて、分割の方法が重要になります。特に弊社の地域では田圃が多く、さらに都心部に出ている息子さんも多いのでしっかりと親子で相続ができていない現状があります。そのため、お父さんが息子さんにこれを渡すといっても、息子さんがいらないという場合も多くみられます。そういったことが起こるのでとにかく話をしてくださいと伝えています。
当社には現在相続支援コンサルタントが7名在籍していますが、交代でセミナー講師をしており、今年は既に5回セミナーを開催しています。今は種まきの時期なのでしっかりとセミナー等で情報発信をして、最終的にはしっかりとコンサルしていきたいですね。
私たちにできることは、相談に乗ることです。専門家の先生たちとのパイプがあるので、ここに相談してもらえる体制づくりをしたい。3店舗ありますが、各店舗に必ず相談できる人を作りたいと思います。


─ ありきといえば相続と思っていただけるようになりたい

 先日うれしいことがありました。突然、飛び込み来店があり、「相続のことはありきが強いと聞いた」と言われました。その時、資産管理チームの相続支援コンサルタントがお話しを聞くと、何世代も登記していない物件を売りたいとのご相談がありました。いきなりこのようなご相談をいただき、本当にうれしい出来事でした。さらに話を聞いていくと、その方は親のお葬式の翌日に当社に来られたのです。
 津山市人口は10万3000人の田舎です。年々、高齢化して、若い方が地元に残らないのです。そうした現状もあるのでこのような時にしっかりと対応できるよう色々な提案方法を理解していかなければなりません。常に勉強をして、セミナーを行うことによって、自己啓発をしています。相続で悩みがあったら「ありきに相談」と思っていただけるようさらに努力が必要です。


─ アウトプットすることの重要性

 正直、インプットのだけの勉強では、こんな話はできませんでした。上級相続支援コンサルタント講習ではアウトプット中心の勉強になるので、伝えるためには事前に色々と調べますし、さらに知識を高めることにもつながります。
 実際にセミナーをする前には、社内で最低2回はプレゼンを行います。資産管理チームの前で1回、全社員の前で1回。最初は講師のために行っていたことでしたが、資格のない従業員もプレゼンを聞きますので、その従業員たちにも相続の知識がついてきます。そうすると通常の業務の中でこの案件だったら、こうやって提案しようなど対応できるようになりました。これは予想を超えた大きな成果でした。相続という言葉が出なくても、これは相続絡みだと理解できるので、取りこぼしが少なくなりました。
 やはり、相続支援コンサルタント講習だけで終わらなかったのが良かったと思います。通常の営業も常にしっかりと悩みを聞き出し、最後はアウトプット。その機会を与えていただいた講習には感謝しています。

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